いよいよ、プロ野球球団が「マーケティング」を始めた


「カープ女子」は単なるブームではない


今や、「カープ女子」を知らない人もいないくらい定着し、ある種の属性の分類ワードにもなっている単語ですね。

2013年のNHKニュースウォッチ9で取り上げたのが最初、とも言われています。 
その後、2014年のユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選ばれたほどです。

「カープ女子」で検索すると、大手雑誌メディアからネットメディアまで多くの
サイトで、「定義」やら「起源」やら「特性」まで、分析のオンパレードです。


- 唯一の市民球団で、かなり前から女子のファンクラブがあった
- 赤という色も含め、応援グッズが可愛かった
- 資金の面から、若手を時間をかけて育てるチーム作りのため、もともと若い選手が多い


などの分析がなされていますが、話題になり始めた結果、2016年に優勝したことが大きかったのではないでしょうか。


昨今、その他のスポーツでも、様々な形で「スポーツビジネス」が勃興してきています。

「eースポーツ」なるものも世界大会はじめ、盛り上がっているようですが、私の感覚だと、これは、「ゲーム」の分類がフィットするので、ここでとりあげようとしている「スポーツ」の分野には含まないことにします。

最近特に、実績も含め顕著になっているのが、「プロ野球」球団の変わりようです。

「カープ女子」の詳細な分析や解説は、その他のサイトにお任せするとして、他の球団でも、変わらざるを得ない球団経営のために、様々なマーケティング施策が実施されるようになってきているのです。

変わらざるを得ない、球団の懐事情とは

高度成長期、日本人の娯楽として、プロ野球は大きな功績を果たして来ました。70−80年代、平日の夜、夏場のテレビといえば「巨人戦」でした。

ところが、90年代に入り、バブル崩壊あたりから視聴率は下がり始め、2000年を境に、70−80年代には、20%台だった視聴率は、2005年ごろには、10%をきるところまで下がってしまいます。

一方で、根っからの野球好きの人たちは、CSの有料放送に流れたということもあり、なんとなく野球をみていた人が、続々とTV視聴から離れていきます。

TV放映料という、大きな収入源が目減りし始め、最もダメージの大きかったのは、セリーグ球団。

もともと、放映料収入が少なかったパリーグの球団の、試行錯誤の地道な観客動員やグッズ販売、ファンサービスなどが、花を開き始めます。

その後、さらに2007年からスマートフォンが普及し始め、放映料というドル箱を失った、プロ野球球団、特に人気球団は、苦悩し始めます。

一方、打開策を探る中、各球団は、TVの視聴率の落ち込みほど、観客の動員数が落ちていないことに気がつき始めます。

他に起死回生の挽回策はなく、結果、球場に誘客して、売り上げを地道に伸ばす方法しか選択肢がなかったのもあります。

実は、2000年代後半に、転職サイトの中途募集欄に、在京球団のマーケティング担当者の募集を、よく見かけましたね。

その後現在に到るまで、各球団は球団特性を活かしつつ、地道に、ファン獲得のマーケティング活動を行って来たのです。


- ファミリー席やグループ席、特別席など、様々なタイプの観客席を設置
- 「●●デー」など、イベントとタイアップした特別日を設定
- 選手と直接触れ合える「ファンイベント」を頻繁に実施
- 限定ユニフォームやグッズとセットになったチケットを販売
- 球場では、TWをするとビジョンに画像を写すライブイベントを実施
- 飲食とセットになった、パブリックビューイングを実施


などなど、高度成長期には考えられないほどの趣向を凝らしたファンサービスを実施しています。

以下に、その実例を紹介したいと思います。

各球団の誘客施策

西武の誘客策

ライオンズは、西武鉄道を使って球場に足を運んでもらうことを第一に考え、沿線に住む家族連れをコアターゲットにし、グラウンドで選手と触れ合えるイベントを多く開催し、親子2代でファンになってもらうのが戦略です。
加えて、旅行気分で電車でビールを飲んでいるうちに球場に到着する、「ビール列車」のような企画も実施してします。

ヱビスビール飲み放題!しかもナイター観戦できる特急電車に乗ってみた|@DIME アットダイム


ヤクルトの誘客施策

都内の立地を活かして、会社帰りのサラリーマンをねらった

"「神宮呑み」観戦"

青空球場の特徴を活かし、開放的なビアガーデンとしてアピール。さらに、「ビール半額デー」を実施し、観客動員数を増やしています。

「今年は1試合平均して『生ビール半額ナイター』では、5000人の増客がありました。多い時は7000~8000人増にも。

引用:東京ヤクルト、なぜ最下位でも観客動員が激増? 神宮球場の「魅力」 | ビジネスジャーナル

最近は、各球団もこぞってビール半額デーを実施しています。
【#球場ビール】一杯300円前後でカンパイ!各球場のお得な半額デーまとめ | ビール女子


DeNAの誘客施策

  • 徹底したターゲット分析と細やかなプロモーション施策
  • 「横浜ブランド」に乗っかり「横浜好き」を囲い込み
  • 選手とのふれあいで、距離感を縮める

DeNAの広報担当と話したところ、

様々なデータを分析して、ターゲットの想定を行って、的確にプロモーション施策がヒットするように、トライ&エラーを行っている

とのことでした。

参考: 横浜DeNAベイスターズはどうファンを増やしたか[前編]――ターゲットのつかみ方 - Insight for D

ターゲティング

各球団は、ロイヤリティの高いファンを行く探っていく中、球団ごとにコア層に
違いがあることに気がつき始めます。
そして、各球団は、このコア層に向けた、プロモーション施策をうち始めました。

各球団のコアターゲットの一例

  • ヤクルト  会社帰りのサラリーマン
  • 西武    小学生を持った沿線ファミリー 親子2代
  • カープ   F1層 いわゆるカープ女子(実は年配の女子も多い)
  • DeNA    「アクティブサラリーマン」+神奈川大好き



まとめ

メディアの多様化と、スマートフォンの登場と普及により、存続のピンチに陥ったプロ野球球団は、

徹底したマーケティグ+デジタルマーケティング活用=ファンのコア化

で見事、動員数を増やし、安定したコアなファンの心を掴み、LTVをあげ、スポーツコンテンツとして見事に復活を果たしました。

スマートフォンやモバイルデバイスの普及により、現業にダメージを追っている業界、企業は、今一度、

自分たちのコアなファンは誰なのか?

を真剣に考える時が来ているのではないでしょうか。

そして、スマホ文化とも握手できなければ、退場は免れないかもしれません。

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