日本の自動車産業は、ほんとうに生き残れるのか?

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自動車産業の内側は時間が止まっている

先日、ある自動車業界紙の紙面に、ある「シンポジウム」の記事が掲載されていました。自動車関連業界トップの方々が、今後の日本自動車産業の進むべき方向について、討論した内容が掲載されていたのです。

その討論で出ていた、象徴的なフレーズをいくつか、以下に拾ってみました。

「もっとカッコよく・・」 「もっと自分らしく・・」 「よりよい多様なカーライフを実現」 「モノからコトへの価値観が変わっていても、車は・・・」 「なんだかんだ言ってもCM効果が・・・」 「日本の基幹産業である自動車産業が果たす役割は・・・」 

仕事上、自動車産業に関わる機会もあり、多くの自動車業界関係者からも、上記のような類似のことばが、会話からよく聞かれるのです。

ことばの端々に、「今」を「正」として、この先もいけるんじゃないか。
そんな意識が透けて見えて、仕方ありません。

スマホとクラウドは、ITベンダーと総合電機メーカーを直撃した


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2005年ごろ、インタネットがかなり普及しはじめ、「クラウド」構想が出始めたころ、IBMやNEC,富士通などのいわゆる大手Sierのスピーカーは、ネットメディアを通し、インターネット×クラウドのセキュリティ脆弱性や、ガチガチにカスタマイズ開発された、既存の企業基幹システムとのマッチング性を指摘し、自分たちの主戦場である「オンプレミスシステム」の「ビジネス堅牢性」を盛んに主張していたことが、思い出されます。

「自分たちは大丈夫だ」 と。

その後、ご存知のとおり、2007年にiPhoneが発売され、一気にスマホが普及。さらに、同じ年にAWS(amazon Amazon Web Services)の提供がEUで開始され始めました。

その後の大きな変化は、いうまでもなく全世界の一般消費者の生活スタイルそのものまで大きく変えることになっていますね。

いまや、子供でさえ持っている「スマートフォン」は、大手通信事業者や総合電機メーカー各社は、こぞって

「あれは売れない、普及しない」

と、言い切っていたのです!
※当事者の方々は、まさかお忘れではないでしょう。

ご存じの通り、総合電機メーカーは、惨憺たる有様であるし、BtoBのビジネスでも、前述のIBM,NEC、富士通などは、いまや、受託システムの売上構成比を激減させ、生き残りをかけ、M&Aも駆使し、デジタルマーケティングやネットサービスの事業会社への転換を加速させています。

自動車産業だけは特別なのか?


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一方、順風だった自動車産業にも、新しい風が吹き始めます。
2015年ごろから、突如、「自動運転」のストリームが起き、「コネクテッドカー」なる「自動車スマホ」が加速し、UBERが「シェアリングサービス」で席捲を始めました。

いまや

「CASE」(コネクテッド・自動運転・シェアリング・EV)

は、自動車産業の将来を見据えるうえでの、外せないキーワードと言われ始めています。

そこで、冒頭で紹介した、「フレーズ」を見ると
従前の自動車産業に従事する、経営陣の内向きな感覚と、薄い危機感は、2000年初頭に見た、大手IT企業のそれとダブって見えて仕方ありません。

確かに、登録車両台数が大きく激減してない上に、日々は労働者不足で忙しく、整備業界などは、危機感などを肌で感じる機会も少ないのかもしれません。

実は、自身の生活自体が変わりつつあることと、自動車業界そのものが大きく変わろうとしていることは、同じことなんです。

スマホ化とリサイクル事業なんて言われても


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こういった環境の変化を含め、
元東大総長の小宮山宏さん(三菱総合研究所理事長)は、2018年「朝日地球会議」でこのようにおっしゃっています。

いまや、日本国内では、自動車産業は「作り直し」産業。廃車させて新車に置き換えている。リサイクル産業なんです。すでに。

と述べている。そのとおり、自動車産業は段ボールと同じく、「リサイクル産業」になっていると。

小宮山先生は、さらに、

日本の都市は、都市鉱山。発展途上国で環境汚染を引き起こして、鉱山を開拓する必要はもうない。

ともおっしゃっています。

自動車産業は、「CASE」に対応し、「都市鉱山」を含めたエコシステムへ変容していかなければならない。

それでも、今から変わらなくて大丈夫なんでしょうか。。。

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