80-90年代の職場コミュニケーション
今の20-30代の若いビジネスマンの方からすると、信じがたいことかもしれませんが、バブル前後までの職場内の人間関係たるや、実に濃密なものでありました。
私が新入社員のころ実際に体験したものでも
- 上司の家に、課員全員で遊びに行く
- 携帯電話も普及していないため、友達も彼女も会社の外線に電話をしてくる。
- ので、私生活はバレバレ。「今の彼女か?」なんで聞かれる。
- 社内の部署対抗球技大会があり、練習と称して、土日に招集され、その後飲み会へ
- 毎年の部署全員の社員旅行 欠席することはありえない
と、今の職場では決して起こらない出来事が、上げたらきりがないくらい出てきます。
いまなら、"〇〇ハラ" になり、考えただけでも恐ろしい。
一方で昨今は、メールやビジネスチャットなどが、職場のコミュニケーション手段になっているため、対人コミュニケーションが希薄になりがちです。
隣の人が横の席にいるのに、
メールで「OKです!!」
なんて平気でレスしたりしますからね。
そんな職場環境を危惧してか、
最近ですと、職場の人間関係があまりに希薄なのを改善するために、「社員旅行」「運動会」「飲みにケーション」などを会社が率先して、開催している会社もでてきています。
そんな会社から、急にこれだけ濃密な人間関係を要求されると、もし、今の上司と馬があわない、なると突然、”人間関係の地獄”が始まってしまうわけです。
”希薄”なままでいいのか、それともいまより”濃密”にしていくべきなのか・・・ とても、難しい問題です。
職場のコミュニケーションの現状 「職場の孤独」
また別の視点で
職場のコミュニケーションが健康に影響を与えている
という記事もあります。
「職場の孤独」
というタイトルで、「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」201806号 に以下のようなレポートが掲載されていました。
(略)オフィスには同僚がたくさんいる(間仕切りのないオープンプランのオフィスさえある)にもかかわらず、全員がコンピューターを見つめているか、人間的なふれあいのない会議に出席しているかだ。ハッピーアワー、コーヒーブレーク、チームビルディング・エクササイズは同僚同士のつながりを築くためのものだが、はたして本当に深い関係づくりに役立っているのだろうか?(中略)孤独はストレスを引き起こし、長期的・慢性的なストレスは代表的なストレスホルモンであるコルチゾールの値を引き上げる
「”ビベック・マーシー 前米国連邦政府 厚生衛生局 長官」
つまり、職場での孤独が、健康被害を引き起こしている、と訴えているわけです。
「職場の孤独」への処方箋と今後の課題
今後さらに加速する働き方改革
企業のみならず、ブラックの温床である中央省庁や行政でも、働き改革の実施による”テレワーク"の促進が、ますますコミュニケーションを難しくすることになっています。
我が社でも、育児や介護による在宅勤務や、働き方の多様性のため、というより”オフィススペース不足対策”のため、サテライトオフィスのテスト利用や事由無き、在宅勤務の促進が始まりつつあります。
従業員にとっては、自分の都合に合わせた働き方が選べることは、大変都合の良いことなのですが、実際には、企業側は勤怠管理のルールや、管理ツールの対応などは、実に遅れており、その割りを食っているのが、直属の上司である、中間管理職なのです。
対面の部署の定例会議が機能しなくなり、ピアtoピアで業務進捗の確認が必要となり、業務が増えているのです。
期待される技術進化
- 進化するコミュニケーションツール
こうしたコミュニケーション対策と業務効率化を目的として、最近は、SlackやSkype for Businessのようないわゆる”ビジネスチャット”が、企業に導入され、いままで主流だった、電子メールのやりとりから、チャットでのやりとりに取って代わるようになってきています。
新興のITベンチャー企業では、立ち上げ時からメインのコミュニケーションツールをチャットにしている企業もあるくらいです。
働く人自体の意識
一方で、技術の進化に期待する半面、実際に働く""人""の意識も変わっていく必要もあるかもしれません。
働くだけではなく、ひとつの人生観の変化の一つとして、最近注目され始めているのが、「ウェルビーイング」という一つの価値観があります。
- 「ウェルビーイング」
>つながりを自覚したいなら、自分自身を開かなければならない。そのためには孤独と戦うのではなく、事実として向き合い、よく見ることから始まる
> (中略)
>新のつながりの自覚があれば、一人でも孤独感にさいなまれず、むしろ孤独の深い味わいを楽しめるようになるでしょう。それを深めた先にあるのは、孤独を糧にすることで成熟した個であり、それは本当の意味で確立された個です。
曹洞宗 僧侶 藤田一照
さらに、欧米では、マインドフルネスについても実に浸透しつつあります。
マインドフルネスは、座禅に通じるものがあると言われ、世界的に取り入れられ始めています。
まとめ
今後、ますます働き方が多様化すると、物理的には対面で人と仕事をする機会が減っていくような気がします。一方非常に簡単に「薄い」コミュニケーションなら今以上に楽にとれるようになりそうです。
この「淡くなった」と「多頻度」のコミュニケーションを取り入れ、生きている人間として、健康被害を起こさないための対策をどう取っていくのか、試行錯誤の対策が必要となりそうです。
また、「孤独」へのポジティブな考え方をも取り入れることにより、希薄な人間関係も、ストレスにならないような各自の意識改革も必要となる時代になってきたと思います。